耳鼻科診療への想い

                          2009年8月16日 タイトルを変えて再アップ

EBM(根拠に基づいた医療)ということばが有名になりましたが、

これとは無縁と思われる

頻回通院による処置中心の古典的耳鼻科治療が

根強く施行されている場合があるのはなぜかなあ??と

病院勤務中ずっと疑問に感じてきました。

推定されるのは、

   耳鼻科の診療単価が低いため受診回数でかせぎたい医師側の都合、

   頻回の通院、治療を好む患者さんの希望、

   大切な子に何か間違いがあってはたいへんと盲目的に従うお母さん、

という構図でしょうか?

頻回の通院治療を好む一部の患者さん(通院が生きがい?)では仕方ありませんが、

心配、不安で子供を通院させ、疲れきっているお母さんたちは、もっと賢くなりましょう。


一方、EBMという言葉も

何が何だかわからないけれど治療効果を保証する

スペードのエースのように用いられる例を見受けます。

いまやインターネットではたくさんの情報があふれています。

多様な情報を広い視野で見て

自分の価値観で冷静に善し悪しを判断しましょう。

正しい判断をする秘訣は

選択した責任が自分自身にある(自己責任)という自覚を持つこと

実際に体験した自分の感覚を信じること

間違っていると感じたらためらわずに修正すること

のようです。


正しいものは、誰の目から見てもシンプル(単純)で美しい

それがこの世の真実という言葉もいろんな本で目にします。

私はカタカナや英語の略語で使われる言葉はその意味をよく考える必要があるかもと思い始めています。


以下は、あくまでも現時点での私の価値観に基づく個人的意見であります。

クリニック開業後もポリシーは変えず、

シンプルで美しい治療を行いたいと思っております。


○ 中耳炎で受診したら必ず鼓膜切開をされるのかしら

     → 鼓膜切開はほんとうに必要なときのみがよいと思います

免疫力のしっかりしたお子さんであれば中耳炎でも抗生剤の投与でほとんど回復します。

ただし、最近は抗生剤の使いすぎによる耐性菌が急激に増えてきていますので、

抗生剤を使っても熱が下がらない場合は鼓膜切開や入院点滴を必要とする場合もあります。

( 鼻腔の細菌培養結果が参考になります)

1−2歳のお子さんは、免疫力がしっかり身についていないため中耳炎を繰り返すことが多い傾向がありますが

年齢が上がるとともに免疫力が上がって中耳炎の頻度が減ってくるのが一般的です。

ただし、1歳頃から幼稚園や保育園にいっているお子さんは

おにいちゃんおねえちゃんたちの強いバイ菌にさらされるのでたいへんです。

鼓膜切開をしても、中耳炎を繰り返さないとは限りません。

むしろ頻回に鼓膜切開をすることで鼓膜がペナペナになるのが心配です。

どうしても鼓膜切開が必要な時は、麻酔を十分効かせておこなうべきでしょう。

無麻酔の切開は耳鼻科嫌いの子を作る原因のひとつになると思います。


鼓膜切開をしても中耳炎を繰り返してしまうお子さんは

中耳を換気するチューブを全身麻酔でいれてあげたほうがよいと思います。


○ 夜、子供が耳が痛いと言ったらあわてて休日夜間診療所へ受診するべきかしら?。

   → 必要ありません

急性中耳炎で痛いのは最初の一晩だけです。

鼓膜切開の処置を急いでおこなう必要がありませんので、

痛みのある時期を薬で乗り切れば大丈夫です。

おうちに痛み止めの内服や解熱の坐薬があればそれを使用してください。

耳鼻科の受診は翌日または休み明けでかまいません。




○ 中耳炎で受診したら、副鼻腔炎があるからと言われ、頻回の通院をするよう医師より言われた

  → 必ずしも必要ないと思います

抗生剤を5日〜1週間使用して、改善の程度を見ればよいでしょう。

中耳炎の原因菌は、鼻副鼻腔、咽頭にいますので、そちらの治療が必要ですが、頻回に通院する必要はないと思います。

ただし急性期を過ぎると慢性の滲出性中耳炎に移行する場合がありますので、

抗生剤が切れたときの再診は必要です。



○ 急性中耳炎のあと、滲出性中耳炎となったけれど、鼓膜切開をしなかったためか?

  → そんなことはありません

急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行することがよくあります。

「だから、鼓膜切開をしなければいけないんだ!!。」。という意見を聞きますが、

鼓膜切開をしても、穴が閉じた後、滲出性中耳炎になる場合もよくあります。

基本的には、その子の免疫力の問題かもしれません。

滲出性中耳炎になる子は、鼻が悪い場合が多いのでこちらの治療をしてあげることが大切です(頻回の通院は必要ないですが)

マクロライド、抗アレルギー剤、鼻水を減らす薬の服用とちゃんと鼻をかませることが大切です。

また、鼻をかまずに「はなすすり」をする子が滲出性中耳炎になりやすい印象があります。

はなすすりをさせない、片方ずつじょうずにはなかみをさせる。

というのが大切でしょう。


○ 学校検診で鼻炎、副鼻腔炎といわれ、耳鼻科を受診したら頻回に通院するように言われた

  → 必要最小限の通院治療で十分

     プールも汚れた鼻水や耳だれがなければほとんどOK

小児の鼻炎(アレルギー性鼻炎)の多くはアレルギー体質に由来します。

アレルギーの原因の多くは、ダニ、ハウスダストです。

お子さんの身の回りにホコリがたまらないように、整理整頓、掃除をしてあげることが大切です。

高タンパク、高カロリー食、スナック、ジャンクフードなど現代的な食事がアレルギーの一因とも言われています。

これらの食品をやめることは不可能ですが、できるだけ控えめにしてあげましょう。

治療は、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を常備して症状に応じて使用すれば十分だと思います。

慢性の現代病ゆえ、なかなかよくなりませんが頻回に通院すればなおると言うものでもありません。

治療中はよくなっても、治療をやめればもとに戻ります。

毎年の検診で鼻炎と指摘されるのは、セレモニーのひとつと思っていただくのがよいかもしれません。

ただし、本当につらい症状のある子はちゃんと治療してあげましょうね。


子供の副鼻腔炎は、アレルギーに細菌感染を合併している場合がほとんどです。

鼻の汚れがひどければ抗生剤(マクロライド)を一時的に使用し、日頃から「はなかみ」の癖をつけさせることが大切です。



○ 花粉症の治療薬はどれくらい処方してもらえるの?

 → 最長、4週間程度でしょうか?

昔、くすりの処方は2週間までという医療保険上の制限がありましたが

今はなくなっています。

では、何か月分もいっきに処方してよいのでしょうか?

薬にはかならず副作用がともないますので、

その効果を判定し、副作用がでないことを確認してゆくということが大切です。

初めての薬を出すときは、12週間分試しに処方してみて、

問題となる副作用がなく、十分な効果があれば、

4
週間分ほど処方するというのが標準的パターンでしょうか?

病院では60日分処方させていただく場合もありますが

せっかくの薬を服用しないで

お家におうちにため込んでいるだけの方もたまにいらっしゃいます。

限りある貴重な医療保険を使っておりますので、大切に使いましょう。



○ 薬のみ処方はいけないの?

 → 医療事故、副作用予防のため、やめたほうが良いと思います

厚生省の方針では、原則×です。

診察のない処方は認められていません。

しかし、外来の混雑を軽減するため、薬のみとせざるを得ない場合が病院医療施設でもあると思います。

副作用の生じない薬をいつもと同じ内容で処方するのは、問題ない場合が多いのですが、

薬のみで、処方内容の追加変更を注文されるのは危険、

ましてや家族や第三者に薬のみを依頼されるのは大変危険(処方間違いのもと)です。

薬だけとする患者さんは、診察に長く待つのはいやだ、時間がないという方が多いのですが、

処方間違いを生じて最終的に損をするのは、患者さんご自身です。


クリニックでは、薬のみ処方はいたしません。



○ 花粉症治療薬の予防内服は必要なの?

 
  → あまり意味ないでしょう


以前から、花粉症の治療薬(抗アレルギー剤)を

花粉が飛散する前から、早々に予防服用することが

推奨されいますが、本当に必要なのでしょうか?


私は子供のころから重症のアレルギー性鼻炎をもっています。

IgEの値は2000を超えています。

ハウスダストの通年性アレルギーに加えて、スギ、雑草、など複数のアレルゲンに強く反応します。

一年中抗アレルギー剤または抗ヒスタミン剤を常用しています。

ちょうど、薬を予防投与しているのと同じ状況です。

それなのに、花粉の時期が来るとつらいのは変わりません。

症状は、その日の天気、花粉飛散量を確実に反映します。

自分の体験では、症状がひどいかどうかは、単純にそのときに飛散する花粉量に関係します。

まったく服用していなければ、もっとつらいというのが予防投与推進派の理論のようですが、

花粉の飛散量が多いときは、まったく効果がありません。

症状の強いときは、ステロイド入りの内服(セレスタミン)か抗ヒスタミン剤を併用し、

マスクをして花粉をブロックするしかありません。。



花粉飛散量の少なかった2004年は例年になく過ごしやすい春でした。

これは優れたクスリが新しく開発されたからではありません。

単純にスギ花粉の量が少なかったからです。

一方、花粉飛散量が多い2005年は、とてもつらい年でした。

予防投与をしていても、していなくてもスギ花粉症の方々は、つらい思いをしました。


こんなときは、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を常用量服用していては間に合いません。

私は、抗ヒスタミン剤のニポラジン(口渇がでるけれど眠気を生じにくく、とても安い!)を倍量服用してなんとかやり過ごしました。

患者さんにも安いニポラジンをたくさん処方しました。

クスリの予防投与は、薬をより多く売りたい方々の宣伝にしか過ぎないのかもと感じることがあります。


最近、花粉症の症状は花粉飛散量の他、

黄砂の飛散量にも影響されると感じ始めています。

黄砂には、身体に有害な物質が含まれているようですから、

その毒を排出する身体の防御反応なのかもしれません。

○ 花粉症治療薬のステロイド注射は危険なの?

 
  → 効果だけ強くて副作用のない夢のようなクスリはありません

    クスリにはかならず作用と副作用があります

    効果、副作用を含め、冷静な判断が必要でしょう


長期に効果が持続するステロイド(ケナコルト)の注射が以前話題となったことがあります。

副作用の生じやすいステロイド注射をおこなうなど、けしからん、と言うものです。

私は、ケナコルトの使用経験がありませんが、たぶんよく効くのでしょう。


ステロイドが花粉症に有効なのは、昔から良く知られています。

アレルギー治療内服薬でもっとも効くのは、

ステロイドと抗ヒスタミン剤の合剤であるセレスタミンですから。。。


セレスタミンは古くからよく処方されてきたクスリです。

耳鼻科では、点滴、内服、ネブライザーなどでステロイドを好んで使用されます。

(私も良く使います。副作用に注意して慎重に使えばとてもよいクスリです)

その一方でケナコルトをむやみに批判するのはどうかなとも感じます?

花粉症以外の治療でケナコルトを使用している他科ドクターの意見を聞いてみたいな、と思います。



自分自身としては、重症のアレルギー性鼻炎患者である自分の身体に一度試してみて、

効果と副作用を体験してみてから、批判をしても遅くはないのでは、と思っています。



インフルエンザの予防接種(副作用が少なくありません)のように、

たまに注射するだけで、花粉症のつらい症状からのがれられるなら、

もしも、副作用を生じる可能性が高くないのなら、

これほど楽な治療はない、 とも思えますが。。。

もちろん、むやみにだらだらと注射を続けるのはダメです。



ただ、これが広がると、クスリが売れずに困る方々がでてきます。

そこが最大の問題なのかもしれません。


付、注射部位の陥没をおこす副作用があるようです。

  やっぱり、あぶない薬のようです。。。。


花粉飛散量が多かった2005年は

ステロイド注射を受けたけれどダメだったという方が何人か受診されました。

魔法の薬は、どこにも存在しないと考えるのがよろしいようです。



○ メニエール病にヘルペスの抗ウイルス剤は効くの?

 
  → 歴史が証明してくれることでしょう


メニエール病は、ヘルペスウイルスの再活性化が原因、

だから抗ウイルス剤(ゾビラックス)が効く、と主張している内科の先生がおられます。

耳鼻科のドクターは、そろって、素人が中途半端なことをやってけしからん、

と意見を出しています。


私も、自分のホームページを作り始めたころ、この先生に批判のメールを出しました。

すると、ぜひとも追試をしてみてほしい、というお手紙をご自分の論文別冊とともにいただきました。

たいへん研究熱心で自分への批判をエネルギーにかえている、ある意味すごい信念をおもちの先生という印象を得ました。


こんな先生には、他人が何を言っても仕方がない(どの方面でもいらしゃるはずです)のが一般的です。



私は、意味もなく批判するのがきらいなので、

もちろん、抗ウイルス剤を希望する患者さん数名(難治性のかた)に試してみました。


顔面神経麻痺や原因不明の耳痛、頭痛に抗ウイルス剤を使用すると、

驚くほど良く効く印象を持っています。

しかし、メニエール病では、、残念ながら、上記の疾患ほど劇的に効く、という印象を得られませんでした。


めまいは安静休養するだけで、自然に軽快する性質があります。

ですから、軽症のかたにどんなクスリを使っても、

そのクスリが効いたと判定される恐れがあります。

軽症のかたに抗ウイルス剤を使って効いた、というのは参考になりません。


従来の治療で、どうやってもめまい発作が抑えられない重症の患者さんで使用してみて、

めまい発作の頻度が減ったり、めまい発作がストップする結果を得られるようでしたら、

これはすごいことでしょう。


マスコミやインターネットの内容を見て、

抗ウイルス剤の治療を希望して、わざわざ北海道まで遠出する方がいらっしゃいますが、

そんなことをする必要はありません。



ヘルペスに対する抗ウイルス剤は、

昔はゾビラックスしかありませんでしたが、

今は、これを改良したバルトレックス(同メーカ−)があります。

バルトレックスのほうが、クスリの服用量と回数が少なくなりました。

心配な副作用は、幸いほとんど認められません。

(腎機能の悪い方は精神症状が出る可能性がありますので投与量を減らす必要があります)