内視鏡を用いた耳手術のちょっとしたコツ 2007年10月 アップ
2011年4月更新
このコンテンツは、上越総合病院勤務時
中耳硬性内視鏡を用いて 経外耳道および経鼓膜的におこなった耳科手術を説明しております。
クリニック開業後は ほぼ同じ方法で鼓膜形成術のみ おこなっております。
内視鏡をもちいることによる
利点は、ピンボケのない鮮やかな画像と広い視野、スタッフとの情報共有
欠点は、片手操作となり内視鏡下手術に慣れ(トレーニング)が必要なことです。
内視鏡によりおこなってきた耳の手術は以下のとおりです
(
詳細は臨床スライド集をご覧ください)
鼓膜形成術
鼓室内に限局する先天性真珠腫摘出術
外リンパ瘻閉鎖術
耳硬化症
内視鏡で耳の手術をおこなってみると
約10年前、鼻副鼻腔手術に内視鏡を導入したときと同様のすぐれた可能性を実感できています。
2007年現在、耳手術に対して内視鏡はごく一部の施設でしか用いられておらず、
内視鏡単独手術をおこなっているのは、たぶん当院だけではないかと思っています。
内視鏡単独にこだわるのは良くありませんが、
内視鏡の良さがもっと広く認知されればと思っています。
このコンテンツでは
これから耳の手術に内視鏡を導入しようとお考えの施設のために
当院でおこなっている中耳内視鏡手術のシステムと設定、
手術器具の配置、麻酔、消毒、術中のちょっとしたコツなどを説明させていただきます。
○ 内視鏡システム
Storzの3CCDカメラシステムを使用しています。(2006年4月、新病院移転時に導入)
3CCDゆえの自然で鮮やかな画像に加え、画像を光学的に拡大できるのが利点です。
硬性内視鏡へのカメラヘッドの接続は泌尿器科手術用90度アダプターを用いています。
これにより内視鏡を安定して保持することが可能となります。
以前は、下のSmith and Nepheuwの1CCDシステムを使用していました。
画像の拡大ができないことを除けば、今でも十分使用に絶えうる良好な性能です。
(今は整形外科手術で活躍しています)
オリンパスは、以前の勤務病院で使用していましたが、
伝統的に色が不自然(血液の赤が強くにじむ、色の幅が狭い印象)であり、好きではありません。
現病院では、外科、泌尿器科、脳外科でオリンパスの最新モデルが導入されていますが、
副鼻腔手術に一度試用した印象は、昔のシステムと同様、好みではありませんでした。
ただし、個人で使用しているデジカメはオリンパス製です。
○ モニター
液晶全盛の今、あえてブラウン管20型モニター(ソニー)を使用しています。
現時点で、液晶は色表現の鮮やかさ、深み、コントラストにおいて
ブラウン管に対して画質が明らかに劣っています。
Storz3CCD+ブラウン管モニターの画像を初めて見ると、そのあざやかさに感動できるでしょう。
○ 光源輝度の設定
鼻・副鼻腔手術では 30
中耳手術では50としてます。
モニターの画面を暗いと感じるときは、手術室の照明を若干暗くしています。
○ 硬性内視鏡 (Storz)
径3mm 長さ6cmは、拡大不要で明るいため、観察には最適です。
ただし、手術に用いる場合、カメラヘッド接続部と手術器具が干渉しやすいため、
径2.7mm 長さ 11cmを光学ズームで使用することがほとんどです。
Storzの内視鏡は視野が広く、
0度だけでも、かなり対応できるのですが、
操作対象が側方にある場合、鼓室内の手術では30度を併用すると利便性が広がります。
下の写真は、左耳後上方の鼓膜穿孔症例に対して
径2.7mm 長さ 11cm 30度の硬性内視鏡を用いたモニター画面を直接撮影したものです。
モニター画面が反射して見えにくいのですが、光学ズームのよさをおわかりいたけると思います。。
拡大前 光学ズーム時
○ 器具の配置
手術する耳と反対側にモニターをおき、患者の腹部上に棚を設置します。
○ 術野のテーピング
頭髪はまったく剃らず、下の写真のようにメパッチとサージカルテープでカバーしています。
○ 患者腹部に設置した棚に、内視鏡、バイポーラ、吸引を置いています。
これは、オペ室ナースが提案してくれた優れもののアイデアです。
○ 内視鏡、バイポーラ、吸引以外の手術器具を頭部にまとめて設置します。
下の写真は経外耳道鼓膜形成術のセットです。
上部中央は耳後部皮下組織の採取器具一式
下部は左から
曇り止めのお湯と内視鏡の先を拭く眼科用シートスポンジ
止血用の極小綿球と外用ボスミンと4%キシロカインの混合液
微小滴下セットを接続したフィブリン糊(0.5ml)
鼓膜処置用の微小器具、耳用摂子、高原の耳用微小鉗子
消毒液と綿球
○ 消毒
0.02%ヘキザックス水を使用しています。
無色透明、粘膜に対する毒性が低く、眼科で用いられているものです。
○ 出血への対応
極小綿球に外用ボスミンと4%キシロカインの混合液(1:1)を浸して出血部分にあてています
鼻副鼻腔手術と同じ組成の混合液を用いており、止血と麻酔効果にすぐれています。
○ 中耳内視鏡手術用微小器具
(THOMASSIN Otoendoscopic Guided Surgery, Micro Instruments,Storz E39D,)
内視鏡の広い視野や30度の内視鏡下操作に対応できます。
下の写真にありませんがSheaの45度微小ピック(No7)を最も汎用しています。
○ 麻酔 (成人 局所麻酔の場合)
1、表面麻酔
手術1時間以上前に
鼓膜麻酔液を適当なサイズにした小綿球に浸み込ませ、扁平にして手術部位にあてます。
鼓膜穿孔が大きく、内耳に麻酔が及ぶ恐れのあるときは、
あらかじめ鼓室内に内耳保護用の小綿球を留置しています。
2、プレメデイケーション
ドルミカム3mg 硫酸アトロピン0.5mgを筋注
3、術中鎮痛補助
フェンタネスト(0.1mg)1Aを執刀直前に静注
4、追加表面麻酔
ボスミン+4%キシロカインを浸した綿球
5、局所麻酔
上記でも疼痛を訴える場合、痛みの主部位(外耳道前壁)に局所麻酔を皮内針で注射
(麻酔液は、耳後部麻酔用10万倍ボスミン入りカルボカイン1%または0.5%カルボカイン)
中耳内視鏡手術の操作感覚は、鼻副鼻腔手術(ESS)とほぼ同様です。
ただし、外耳道は鼻よりもかなり狭いため、傷つけないようにする注意と慣れ
そして、多少の根気と意欲が必要かと思われます。
ESSに慣れた術者が、まずチュービングでおこない
内視鏡の感覚に慣れたところで鼓膜形成へ
次に中耳手術へとチャレンジしてゆくのが、よいと思います
(自分の経験してきた道です)
以上、ご参考になれば幸いです。