滲出性中耳炎についての説明と、当院の治療方針を更新追加しました。
急性中耳炎、滲出性中耳炎の治療は、
自分の臨床経験をもとに、できるかぎり
患者さんとご家族に負担をかける処置手術をおこなわないという
ポリシーでおこなっている内容をだしています。
ただし、治療に対する考え方は、医師により異なることをご了承ください。
小児の中耳炎に関するコンテンツは、寺本耳鼻咽喉科のページをおすすめします。
ご自分のお子さんで苦労された経験と開業医としての、日々の経験をふまえて、
非常にていねいにわかりやすく作られています。
目 次
耳のやくわり
耳の病気
補聴器について
耳鳴りについて
人工内耳について
− 目次へ −

外耳は、音を耳の穴の奥にある鼓膜へ集める役割をしています。
鼓膜は、外耳道の皮膚の延長で、小さな穴があいても自然に閉じる力をもっています。
耳のゴミは、耳あかとして排泄されます。
鼓膜に近い奥の耳あかは、時間とともに外側へ排出されます。
無理矢理、おくにある耳あかをとろうとするのは、危険です。
耳あかには、外耳道を殺菌する力があります。
外耳道の皮膚は繊細ですので、過剰な耳掃除は禁物です。

外耳で集められた音は、鼓膜を振動させ、
3つの耳小骨( つち骨、きぬた骨、あぶみ骨)を伝わり、内耳の蝸牛(かぎゅ う)へ伝えられます。
外耳と内耳のあいだに中耳があることに より、
山にのぼったり、飛行機にのったときに身のまわりの気圧が変化しても、
圧力を調節して効率よく音を内耳へ伝えることができます。
この圧力の調節には、耳管とよばれる中耳と鼻咽頭(いんとう)をつなぐ管が関係しています。
また、大きい 音が入ってきたときには、耳小骨にくっついた筋肉が収縮して、
音が内耳へ伝わらないようにブロックされます。中耳は内耳を守る役割もしているのです。
心地よい音、身の危険を知らせてくれる音、
耳は生きてゆくために必要な音の情報をききとる大切な役割をしています。
何よりも大切なのは、コミュニケーションに必要な会話 をききとる役割です。
音をきく役割は、内耳の蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる部分が担当しています。
私たちは、目をつむっていても、暗い部屋にいても、
自分が上を向いているのか、下を向いているのかわかります。
重力のかかる地球上では、自分の頭がどっちをむいているのか、
どの方向に動いているのかを感じとることができます。
この役割を内耳の前庭(ぜんてい)三半規管が担当しています。
重力のほとんどない宇宙では、自分の頭の位置 は目でみないとわからなくなってしまいます。
宇宙飛行士が、体験する宇宙酔いは、重力刺激を失った三半規管のおおきなとまどいかもしれません。
− 目次へ −


小児科で風邪の治療中、耳が痛くなる場合があります。
免疫力の弱い小さな子どもに多い病気です。
鼻咽頭、副鼻腔のバイ菌が、耳管をつたわり中耳に広がることが原因です。
非常につよい痛みを感じますが、痛みが強いのはたいてい最初の一晩だけです。
このとき、あわてず痛み止めの内服や座薬を使ってあげれば、ひとまず痛みはおさまります。
翌日耳鼻科を受診すれば大丈夫です。
重症の場合は、鼓膜切開を必要とする場合がありますが、
現在は、強い抗生物質のおかげで、切開をしなくともほとんどなおるようになりました。

小児期の中耳炎が完全に治らず、
鼓膜に穴があいたままの状態が残ったものです。
風邪をひくたびにみみだれがでます。
内耳に音が伝わらないため、伝音難聴になります。
根治的には、中耳の汚れを清掃し、鼓膜、耳小骨連鎖を再建する手術が必要です。

鼻や副鼻腔に慢性炎症があったり、耳管機能が悪いため、中耳換気が不良な場合、
中耳内圧が下がり、鼓膜前上部の弱い部分が中耳腔に引き込まれます。
このポケットに耳あかと同じ成分がたまりますると真珠腫となります。
外耳道にあれば、なんでもない耳あかですむのですが、
中耳腔の陰圧に引き込まれ、真珠種は中耳のおくに広がります。
真珠腫に炎症が加わると、中耳、内耳の大事な組織が破壊されます。
症状は頑固なみみだれと難聴、
進行するとめまいや顔面神経麻痺が出現します。
小児の場合は、先天性に中耳内に真珠腫が認められることもあります。
手術をしても再発しやすく、なかなかやっかいです。
急性中耳炎、頑固なみみだれを繰り返す場合は、真珠腫をうたがうことが大切です。
− 目次へ −

鼻が悪く、鼻かみがへた、鼻すすりの癖のある子に多い病気です。
中耳を換気する耳管は、鼻の奥に開いています。
アレルギーや蓄膿、アデノイドといった病気があると、
耳管に悪影響が生じ、中耳の換気(いわゆる耳抜き)がうまくできません。
鼻すすりで鼓膜がへこみ、時間がたつと中耳に副鼻腔炎のように液がたまります。
このため、軽度の難聴になります。
感覚的には、自分の耳の穴を指でふさいだ時の聞こえ方と同じと思 って下さい。
中耳の液にバイ菌が入り込み、急性中耳炎を繰り返す場合もあります。
軽い難聴であるため、気づかれずに過ごす場合も多 いようですが、
お子さんがテレビの音を大きくしていたり、
後ろから声をかけても返事しない、
言葉の発音が少しおかしいなど気づくことがあれば、
滲出性中耳炎のある可能性が高いでしょう。
お子さんが鼻水をたらしぎみで、
いびきをかき、寝るときに口呼吸をしている場合は、さらに確実です。
小児副鼻腔炎の多い、2才から7才頃までが好発時期です。
小学校へ入学する頃から、子どもの病気は、自然に改善する傾向があります。
治療は、7才頃までの時期をいかに良い状態で過ごすかが問題となります。
まず、耳管換気に悪影響をあたえる、鼻の病気(副鼻腔炎、アレルギー)を治療することが大切です。
以前は、良いクスリがなかったため、
積極的に鼓膜を切開して換気のチューブを留置しました。
また、同時にアデノイドの切除もおこないました。
しかし、チューブ抜去後に鼓膜穿孔が残ったり、
穿孔閉鎖後、滲出性中耳炎が再発する問題がありました。

ここ数年、ニューマクロライドとよばれる抗生物質(商品名クラリス、クラリシッド)が
副鼻腔炎を劇的に改善させ、これにともない滲出性中耳炎も改善することが確認されました。
ニューマクロライドの内服により、
1-2カ月以内に多くの患者さんで症状の改善が認められるようになり、手術をする必要とする子が減りました。
ただし、
ニューマクロライドには気管支拡張剤テオドールの血中濃度を高める相互作用があります。
小児滲出性中耳炎の患者さんには、喘息治療でテオドールを服用している子が多くいます。
ニューマクロライドを同時期に服用するときには、
テオドール血中濃度が上がりすぎないように、服用量を一割ほど少な目にするなど、
小児科の先生と相談することが望ましいでしょう。
もうひとつ、酸味のあるものと一緒にすると、大人も飲めないくらい苦くなる欠点があります。
クスリを飲みやすくしようとして、ジュースやヨーグルトと混ぜることは避けてください。
副鼻腔炎の治療に良く使われるムコダインも酸性ですので、いっしょに服用するの難しくなります。
(そのため当院では、クラリシッドとムコダインを一緒に処方しないよう心がけています)
滲出性中耳炎は、一度良くなっても、風邪をひくたびに副鼻腔炎ととも再発するため、
症状に応じてクスリを再使用する必要があります。
耳が自然によくなる7歳まで、あせらず気楽に過ごすことが大切です。
残念ながら、
平成15年頃から、ニューマクロライドが効きにくくなってきています。
このため、再び、以前のようにチューブを留置せざるをえないケースが増えてきています。
<当院の滲出性中耳炎に対する治療方針> 平成15年1月時点
1、まずは、内服を中心とした鼻の保存治療をおこなう。
はなかみの習慣をつける。
はなすすりの癖をなおす。
2、内服薬として、クラリシッドドライシロップ、ノイチーム、ザジテンを処方。
通院は、最初1週間に一度、
薬の副作用がなければ、2週間に一度とする。
3、一ヶ月間治療しても効果が不十分な場合は、通気治療を追加する。
4、ある程度、治療効果が認められたら、クラリシッドを中止。
ノイチーム、ザジテンを鼻の具合にあわせて内服とする。
風邪引きなどをきっかけとして、再発した場合は、クラリシッドを再開する。
5、手術(チュービング)の適応
上記の保存治療が無効で、聴力が改善せず、
通気治療をさせてくれない子。
6、チュービング施行後の通院
鼻が汚れている場合は、1−2週間に一度。
鼻がきれいな場合は、一ヶ月に一度。
− 目次へ −
いわゆる年寄り耳です。これをなおすことは、若返りの薬をつくるのと同じぐらい難しいことです。
程度の強い場合には、補聴器を使っていただくしか方法はありません。
やっかいなことに、補聴器をつけてもうるさいだけだと感謝されないことが多いのも事実です。
原因不明に、ある日ある時突然に聞こえが悪くなる急性の内耳性難聴です。
耳鳴りや、音が反響して 聞こえるなどの症状が自覚される場合や、
めまいをともなっている場合は、内耳が障害されていると思って、まず間違いありません。
寝不足やストレス、 風邪のウイルス、内耳の微少血管血流障害が関係すると考えられています。
大切なことは、できるだけ早い時期に 耳鼻科医の診察、聴力検査をうけ、
早期に適切な治療を開始することです。
そのうち治るだろうと放置しておくのは危険です。
発症後、2週間を過ぎると治る可能性は非常に低くなります。
強く鼻をかんだときや、飛行機の上昇下降の気圧変化などにより、
内耳の膜に亀裂が生じ、内耳液が漏れる、外リンパ漏とよばれる病気が、
突発性難聴と思われてきた患者さんの中にいることが知られてきました。
耳もとで鉄砲が暴発した、狭い部屋で大きな音にさらされた、
ロックコンサートでスピ ーカーの前にいた、
大きなボリュームで密閉型のヘッドホンをつけて一晩寝て過ごした
などの後に耳の聞こえが悪くなる場合があります。
これは、大きな音で内耳の蝸牛(蝸牛) が障害されたためにおきた、急性の音響性外傷と呼ばれます。
軽い難聴の場合には、治る こともありますが、後遺症として残る場合も多く見られます。
騒音のひどい職場で、長年働いている方で、特定の周波数(4000Hz)を中心に難聴が生 じる場合があります。
これは、大きな音による慢性の音響外傷です。
いずれも、耳栓をする、大きな音からできるだけ身を遠ざける、
大きなボリュームで音 楽を聴きっぱなしにしないなどの、予防が一番大切です。
騒音のなかで作業する職場に勤務しておられる方は、年に一度聴力検査を受けられる ことをおすすめします。
− 目次へ −
直接の原因は不明ですが、内リンパ 液の調節障害により、内リンパ水腫を生じる病気とされています。
日頃はなんともないのですが、体調が悪くなるとめまい、難聴、耳鳴りが生じます。
多くは、ストレスに弱い人がなるようですが、免疫異常やアレル ギーなどが関係することも推定されています。
難病のひとつですが、程度の軽い場合には、生活に気をつけるだけで改善します。
几帳面なA 型性格の方が、ストレス、過労、睡眠不足をきっかけに発症することが多いようです。
低気圧が通り過ぎたときの、気圧気候の変化もきっかけになるようです。
治療は、症状におうじて、めまい止めのクスリや循環改善剤、精神安定剤を使用するのがよいようです。
頑固な症状には、イソバイドとよばれる利尿剤が有効です。
クスリによる治療に抵抗する場合は、手術的治療をおこなう場合も時にあります。
ただし、一番大切なのは、ストレスの少ない、無理をしないリラックスした生活を心がけることです。
もっと言えば、少々だらけた生活をしたほうが良いでしょう。
自分が頑張ってやらなくとも、物事は以外にうまく行くものです。
内耳の前庭の耳石器は、重力の変化を感じる器官で、小さな耳石が何万と付着しています。
この耳石やカルシウムが、何らかの原因で、耳石器のとなりにある三半規管にくっつくと、
あたまが動いたとき、石が三半規管に強い刺激をあたえ、
頭をはげしくゆさぶられるような、グル グル回る強いめまいを生じます。
一般的には、右後方へ頭を倒したときと、頭をおこしたときにめまいが生じる場合は右、
左後方へ頭を倒したときと、頭をおこしたときにめまいが生じる場合は、左の
三半規管に石やカルシウムが付着していると考えられます。
この付着物を、三半規管のじゃまにならない部位へおいやれば、症状が改善します。
めまいをこわがってじっとしているよりも、
むしろ、積極的に頭を揺り動かした方が改善しやすいようです。
症状が頑固な場合は、石やカルシウムを、じゃまにならない部位へずらす
リハビリ的な治療が有効です。
− 目次へ −
補聴器は、その名の通り、聴くのを補う機械です。
原理は簡単で、マイクでひろった音 を増幅して中耳へ聞かせるというものです。
難聴の程度にあわせて、出力の弱いものから 強いものまであります。
また、生活様式に合わせて、箱形から耳あな型までが用意されて います。
最近は自分の耳のあなの型をとるオーダーメイドもあります。
増幅された音は、 どうしても機械的な音になり、人により音の好みが分かれます。
単純に音が増幅されるた め、雑音も大きくなります。
よくあるトラブルは、音は大きく聞こえるが、雑音、環境音が 耳ざわりとなり、会話が聞き取れないというものです。
この問題は、いまだ完全には解決 していません。
自動車と同じように、安いものから高いものまで、いろいろなタイプがあります。
一般的には、高いものほど見かけと性能が良いのですが、
高齢者の場合は、大きな安いものの方が良い場合もあります。
いろんなタイプを試してみて、予算と生活様式を考慮し、自分に一番合うものを見つけていただくこ とが良いようです。
いろいろな業者が乱立していますが、機械は壊れやすいものですから、
アフターケアーのしっかりした良い業者を選ぶことが大切です。
また、補聴器を選ぶ場合は、必ず耳鼻科医に相談することが大切でしょう。

一番、原始的なタイプです。格好は少し悪いのですが、性能は安定しています。

箱形より一歩進んだタイプです。
箱形よりも目立たず、高齢者でも気軽に扱うことができ、性能も安定しています。

技術の進歩とともに、補聴器補聴器の主流となってきています。
目立たないため、若い方に最適です。
自分の耳あなの形にあわせたオーダーメイドも作成できます。
性能もかなり安定しています。
ただし、小型化しすぎて、お年寄りには扱いがやや難しく、
喪失してしまったり、踏みつけてこわしてしまう場合も時にあるようです。
デジタル補聴器は、音の増幅をデジタル処理で周波数ごとに細かく調節してやろうという考えのものです。
周波数ごとの聴力が、複雑な方に適しており、いろいろな性能で
従来のアナログ補聴器よりも優れているようですが、
今は、ちょっと高すぎるように思われます。
ただし、世の中の流れがデジタル方向に向いているのは確実なので、
将来は、デジタル補聴器が現在よりも安く、主流になると思われます。
− 目次へ −
音を感じるしくみに不都合がある場合、
たとえば、内耳の細胞や神経、血管が具合悪い場合、
聴神経の具合が悪い場合、音を理解する脳が具合悪い場合など、
いろいろな原因で耳 鳴りがおきます。
まれに、きこえにまったく問題がない人で耳鳴りを感じる場合もありま す。
耳鳴りは、それ自身が病気なのではなく、
一般的には、難聴があることにともなう症状の一つであると認識してください。
原因となる音を感じるしくみの不都合をなおすことが、第一です。
つまり難聴の治療をまず最初にためしてみます。
これでダメな場合は、耳鳴りがなるべく気にならないようになるような治療を試みます。
特殊な治療として、麻酔薬の注射や、中耳へのクスリの注入、電気刺激をためす場合もあります。
しかし、確実に耳鳴りをなくす治療方法は、現在のところありません。
治すことが難しいゆえに、民間療法がいろいろありますが、
どれも確実ではありません。
世の中に耳鳴りを感じている方は、たくさんいらっしゃいますが、
耳鳴りに苦しむ方は、耳鳴りに対するこだわりが強いかたのようです。
自分でも加齢とともに、一年ほど前から、高音域の難聴が生じ、
これにともない耳鳴りを自覚するようになりました。
耳鳴りは常に鳴っているようですが、
一生懸命仕事をしているとき、楽しいことをしているときは、気になりません。
仕事に疲れてきたときや、体調不良の時は、頭の中ではげしくセミが鳴き出します。
一番大切なのは、耳鳴りを敵としていみきらうのではなく、
自分の体調の善し悪しを教えてくれるバロメータとして、
やさしく受け入れる気持ちをもてるようにすることだと思っています。
− 目次へ −

音を感じる内耳(蝸牛)の有毛細胞が高度のダメージをうけ、聴力が失われているひとでも、
聴神経が元気であれば、神経を電気で刺激すると脳が音を感じることができます。
蝸牛神経が生きていることを確認できた患者さんの内耳(蝸牛)に
蝸牛神経を直接電気刺激する電線をいれるのが人工内耳です。
人工内耳の手術をうけた患者さんが感じる音は、私たちが感じる音とは違う機械的な音で、
従来は、新しい音に慣れるため、かなり苦労を要したようです。
しかし、技術の進歩とともに埋め込まれる刺激電極が単チャンネルから多チャンネルとなり、
また、コンピュータプログラムが改良され、
早い患者さんで手術後、数カ月で電話による会話が可能になる場合も出てきているようです。
保険を使うことが可能となったため、治療費用が高いという問題が解決されました。
手術の技術的は、中耳手術にくらべてけっして困難ではないのですが、
術前検査と術後のリハビリテーションが非常に大切なため、
検査、リハビリに精通した言語聴覚士がいる許可施設でのみおこなわれます。
従来は、成人の中途聴力喪失者のみを治療対象としていましたが、
現在、先天性の幼児難聴患者さんにも適応が広げられ、
これからの発展が期待されている治療法です。
− 目次へ −