内視鏡下副鼻腔手術(ESS)


 近年、鼻副鼻腔炎の手術は、患者さんの負担が少ない,内視鏡を用いた鼻手術が標準的となっています。

 ここでは、内視鏡下副鼻腔手術(Endoscopic Sinus Surgery)、

 略してESSについて、説明いたします。

 付、2004年現在、旧式の手術をおこなっているところは、まさかないでしょうけれど、

   もし副鼻腔炎の手術をすすめられたら、ESSかどうか主治医に確認しましょう。


  術前後の治療経過や起こりうるトラブルなどを知りたい方は、

内視鏡下副鼻腔手術の説明と同意の文書(インフォームドコンセント)と患者さんにお渡ししている文書

  をご覧ください。


 最近、内視鏡手術をおこなっている施設を教えてほしい、とのメールをよくいただきますが、

 2004年現在、ほとんどの施設でおこなえるようになってきているようです。

 ただし、症例経験は医師ごとに異なりますから、入院期間、麻酔方法などを含めて確認できると良いでしょう。


      スライド風に作成しなおしたコンテンツもどうぞ。


  手術モニター画面


     
  鼻の穴に内視鏡と手術器具を挿入して手術をおこないます。

  唇の裏を切ったり、上顎の骨をけずったりして顔にきずをつけません。

     

 

  ESSの原理
 
  ESSは、鼻の穴から副鼻腔炎の原因となる最低限の部分のみ切除する手術方法です。

  ESSの原理を知っていただくために、

  副鼻腔炎の発生するしくみを簡単に説明します。

  理解しやすいように、一側のみ副鼻腔炎のある患者さんのCT写真(前額断)を用います。
 
    

 
下の写真でで示した空洞が、正常なきれいな副鼻腔です。

 副鼻腔は、
で囲んだ自然孔で鼻腔と交通しています。

 
     

 鼻腔では、自然孔を介して換気がおこなわれ、また、よごれた粘液が鼻腔に排出されています。
 
 この自然孔は、ちょっとしたきっかけで簡単にふさがってしまいます。 
  
 下の写真で線で囲まれた部位が、ふさがった右の自然孔です。 

     

 鼻にポリープができたり、炎症で鼻の粘膜がむくむと、このような状態になります。 
  
 鼻腔との交通がさまたげられた副鼻腔は、換気排液ができなくなり、

 囲んだ部分
のように、よごれた粘液がたまり炎症をおこします。 これが副鼻腔炎です。

 

 従来の副鼻腔炎手術(いわゆる鼻根本手術)は、

 汚れた副鼻腔の粘膜を徹底的に除去しました。

 そのため、上唇の裏を切って、上顎の骨をけずる必要がありました。

 術後、頬のしびれや痛み、腫れが生じ、出血も少なくありませんでした。

 また、術後、数年から数十年たって、頬にうみの袋ができる術後性頬部嚢腫が発生する可能性がありました。

 むかし、蓄膿の手術でたいへんつらい思いをし、2度と同じ手術は受けたくないと感じた患者さんは少なくありません。

 

ESSでは、
副鼻腔炎の直接の原因となる自然孔周囲の病変のみを手術的に除去し、
副鼻腔の自律的な換気排液機能を回復させます。
 
 

  自然孔の周囲は、薄い骨がいくつか集まった複雑な構造をしています。

  薄い骨を介して目や脳に接しているため、これらを傷つけることなく安全に操作するため、内視鏡を用います。

  従来からも、鼻内手術がおこなわれていましたが、狭く暗いトンネルを掘るような不確実なものでした。

  内視鏡を用いることで、視野が広く明るくなり、手術がより安全に施行できるようになりました。

 

ESSの利点

 ・上唇の裏を切らないため、術後、頬の腫れやしびれが生じない

 ・最小限の粘膜しか切除しないため、出血や痛みが少ない、

 ・鼻根本手術後に発症する、術後性頬部嚢腫が発生する危険が非常に少ない

 ・軽傷の副鼻腔炎の場合は、外来手術も可能

 ・モニターに手術操作画面をうつすため、患者さんへの手術説明や医師、看護婦の研修に役立つ

ESSの欠点は

・内視鏡とモニター、専用手術器具の追加が必要、

  当院では、耳鼻科専用の内視鏡装置を用いることはまれであり、他科と共有使用しています。

  外科、産婦人科、泌尿器科、整形外科と、現在、日常的に内視鏡手術をおこなう科は、いろいろあります。

  すでにある手術室の設備を共有することで、内視鏡手術開始の費用を節約する事ができます。

  自然孔周囲の操作に用いる特別な手術器具の追加は、わずかです。

・内視鏡手術に対する慣れが必要

  副鼻腔手術の経験が豊富な術者の指導のもとで、手術がおこなわれることが必要です。

  また、いざという時、従来の手術方法に切り替えることができる準備が必要です。

 

次に実際の手術例を示します。